始まりは唇から 鹿猫
「何してるの?」
リーマスが無表情で聞いた。
「夜の、散歩さ」
ジェームズは大儀そうに起き上がるとリーマスに微笑んでその場を去ろうとした。
「スリザリンへ?」
囁くような響きにジェームズが振り返る。
リーマスの目は鋭く、そして厳しいものだった。
「まさか」
素っ気なく肩をすくめる。
リーマスが足早にジェームズに近づいた。
「セブルスの匂いがするよ。ジェームズ」
リーマスは挑発的な眼差しで言った。
ジェームズの表情がにわかに凍りついた。
リーマスは構わず続けた。
「セブルスに何をしてるの?ジェームズ?」
ジェームズはおどけた。
「別に、何も?」
「ジェームズ」
リーマスは引き下がらなかった。ベッドへ歩こうとする腕を捕まえて囁いた。
「セブルスを追い詰めない方がいい。なぜなら、君も追い詰められている」
ジェームズは目を見張った。何がしかの審判を受けたような、驚きを隠せない表情だった。
リーマスはジェームズの脇をすり抜けて闇の中に消えた。
ー…君を抱く、僕は、恋をしていたんだと思う。ずっと。セブルス、君が女の子と話している時、同じ寮の奴らと話している時、僕が感じてた憤りは君へのものでなく、彼らへの嫉妬だったんだ。その目を僕に向けてはくれないか?僕のことだけを見てはくれないか?
あの時、嘘なんかつかなければよかった。自分はジェームズ・ポッターだと白状して、そのまま想いを打ち明ければよかった。でも、どうして君は受け入れてくれたの?