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始まりは唇から 鹿猫







最後のキス・最後の涙










「キスしてセブルス…」

ジェームズは眼鏡を外すと椅子に座ったまま、窓の外を見ているセブルスにそっと言った。
窓辺に立ち、オレンジ色の夕日を浴びたセブルスの横顔は、黒髪に隠れて見えなかった。
細い髪の毛が陽に当たって光の筋になっている。

ジェームズは愛しい人を目を細めて見つめていた。

セブルスはジェームズのいる左側に顔を向けた。

「セブ…」

ジェームズが切なそうにセブルスを見上げた。

「泣かないで…」

セブルスは無言でジェームズに近づいた。ジェームズの開いた足の間に立つ。見下ろしたまま、両手でジェームズの頬を包み、上を向かせた。
そしてゆっくりと鳥が翼で卵を守るように背を丸めて、顔を近づけた。

そっと口付ける。

ジェームズの頬に柔らかな髪が落ちる。

ジェームズは涙が頬を伝うのを感じた。

惜しむかのように唇を離し、セブルスは澄んだ泉のようなハシバミ色の目を覗き込んだ。
涙に揺らぎ、ジェームズも泣いていた。

頬を濡らしながら、ジェームズは幼い子供のように両手を伸ばした。

セブルスは身体をジェームズに預けるように傾け、その両腕に収まった。
そしてジェームズを思い切り抱き締めた。

今まで抱き締めてもらった分、愛された分、愛している分、力いっぱい抱き締めた。

ジェームズは息ができないほど抱き締められ、その胸に顔を埋めながら泣いた。







end.
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