氷砂糖 鹿猫
たまには驚かせてやろうと思ったんだ。それなのに。
氷砂糖
セブルスはゆっくりとジェームズに貸すレポートを持って、いつものメンバーが歓談している場所へ近づいた。
シリウスがいるのは気に食わないが、ジェームズが一人でいることは少ないのだから、まあ良い。
そっとジェームズの背後に近づき、そのまま後ろから腕を回した。
ジェームズがびくりと体を強張らせた。
「いい加減にしろよ。マーガレット」
セブルスは耳を疑いながらも、気が付くと全力でその場から走り去っていた。
「?」
ジェームズが首を傾げる。シリウスが唖然としてジェームズに言った。
「お前最悪だな」
「え?」
「セブルス!!」
リーマスが慌ててセブルスが出て行った扉へ走った。
「……」
ジェームズは驚きと後悔が広がる表情で言葉を失った。
ピーターはそんなジェームズの横顔を見ながら、クィディッチで負けてもこんな顔はしないだろうと思った。
リーマスは誰もいない廊下に立っていた。ジェームズがすぐに追いついた。
「ダメだ…見失った…」
リーマスが切迫して言った。
「ジェームズ?」
心配そうに顔を覗き込む。
ジェームズはきょろきょろしながら杖を出して箒を呼んだ。
まるで世界が終わったような顔だった。
「リーマス」
ジェームズが庭を見たまま言った。
「何?」
リーマスが俊敏に返事をする。
「先に食堂へ行っててくれ。セブが来るかも…僕はセブを探す」
「じゃあボクも行くよ」
「いやいい、ごめん」
リーマスは励ますようにジェームズの肩に手を置いた。
「後で合流しよ」
ジェームズは短く頷き、箒に乗って飛び出した。
セブルスは庭を横切り、そのまま森へ走った。足を止めたら涙がこぼれそうだった。
これくらいのことで泣いてたまるか。
戻ることも考えず、森の中を歩き始めた。
馬鹿みたいだ。自分が恥ずかしい。悔しい。
どのくらい進んだのだろうか、セブルスはついに立ち止まり、肩で息をしながらその場に膝を付いた。
すぐ近くで犬の鳴き声が聞こえた。
1/5ページ