アイリス 鹿猫
トビアスはお茶の時も、夕食の時も始終無言だった。
ジェームズが口を利くたびに、視線で殺せないかと思っているかのような険しい顔で、ぎりぎりと睨み付けた。
セブルスはアイリーンとジェームズの会話を聞きながら、やはり無言でいた。
緊張のあまり、夕食の味もぼやけてしまった。父トビアスがいつ爆発するのかが気になり、自分の口に何を運んだのかも見ることができないほどだった。
「そう、ジェームズ、あなたは純血なの?ポッター家のことは耳にしたことがあるわ。とてもよい家柄だそうね」
アイリーンが料理を勧める。
「はい。プリンス家のことも両親から聞いたことがあります。薬草と魔法薬を数多く所持し、管理している高名な家系だと」
「恐縮だわ」
二人はトビアスにもセブルスにも分からない魔法世界の家系、血縁について話をしていた。
セブルスは少なからず気後れを感じ、うつむいた。
トビアスは少しでも早く夕食を終わらせようと、次々と皿を空け、乱暴にアイリーンに突き返し、お茶を要求した。
四人は沈黙の中、お茶を飲んだ。
アイリーンとジェームズが二言三言、会話したが、すぐに静かになった。
そんな中、ジェームズがおもむろに紅茶の椀を置き、それを前にずらすと居を正した。
目の前でそれを見たアイリーンもカップを置いた。
セブルスは一口も飲んでいないカップに手を置き、紅茶に映る明かりを見つめながら、二人の様子をうかがった。
カップを持つ手に自然と力が入る。
ジェームズはトビアスを見た。
トビアスは視線を感じたが、目を合わさず紅茶をがぶ飲みしている。一刻も早く席を立ちたいらしかった。
「トビアスさん…アイリーンさん…今日はお招き下さってありがとうございました」
「貴様が勝手に入ってきたんだ!恥知らずが!」
トビアスが噛み付いた。
ジェームズは一度うつむき、顔を上げた。
「今日は大切なお話があって来ました」
ジェームズの言葉にセブルスはたまらず目を閉じた。