アイリス 鹿猫
「おい、リーマス、あんまりじろじろ見るなよ」
シリウスが僕の耳元で囁いた。
そんなこと言ったって、シリウスだってセブルスをじろじろ見てる。セブルスというより、彼の隣で石みたいに固まっているお父さんを見ている。
「ねえ、シリウス…どことなく似てるね」
「どこが」
だって、セブルスもお父さんも、絨毯の前でガチガチに緊張して、固まっているんだから。
僕はそんな二人にくすくす笑ってしまう。
シリウスが僕を突つく。
僕は咳払いをして、二人を眺めた。
セブルスはやっぱりすごく綺麗で、手の甲まで白い袖に包まれている。
襟も詰襟で、胸元には紫のようにも青のようにも見える宝石が埋め込まれたアイリスの花のブローチをつけている。
真っ白な姿に、ベール越しに見える黒髪がすごく神秘的で、思わず溜息が出てしまう。
セブルスのお父さんも礼服に身を包んでいる。
眉間の皺とか、きつく結んだ口元なんかは特にそっくりだ。
セブルスがうつむいた。
きっと、また照れているんだって感じる。
お父さんが前を向いたまま囁いた。
「セブルス…」
セブルスは少しだけ目線を動かした。
「…綺麗だ…」
セブルスが弾かれたように顔を上げた。
真っ赤になっている。
だけど、それ以上にお父さんはゆでだこみたいになっている。
僕はそっとセブルスに声をかけた。
「セブルス…ほら、お父さんの腕を…」
セブルスは僕を見て、緊張したまま、お父さんの腕に手を絡めた。
二人は歩き出した。
ジェームズが背中を向けて待っている。
これから旅立つ彼の背中に、セブルスとお父さんが歩いていく。