アイリス 鹿猫



「下ろせ…ジェームズ…僕も歩く」

ジェームズがセブルスの目を見た。

セブルスは微笑んだ。

「一緒だと言っただろう?結婚とは、共に歩くことだと言っただろう?僕を下ろせ…」



二人は寄り添いながら、支えあうように歩き出した。


-…ダンブルドア…あなたはこんな僕たちをどう思うのでしょうか…わがままで…無謀で…あなたはきっと呆れるでしょう…運命に従えと…諦めて、選択をして…そうして生きて…笑って暮らせと…-

ジェームズは顔を上げた。
微笑みながら、その瞳は必死に訴えている。
セブルスの肩を抱きながら、独り言のように呟いた。


「分かっています……でも……代わりはいないんです……この人の代わりはいないんです…」



一歩踏み出すたびに、皮膚が裂けるのが分かる。
一瞬感覚がなくなり、激痛に変わる。

ジェームズの額に脂汗が浮かび、セブルスの顔は蒼白だった。




アーサーは絨毯を見つめ、杖を抜いた。
しかし、自分よりも先に絨毯に呪文が放たれた。

青白い光が絨毯に落ち、赤く灼ける光の筋を消してゆく。

アーサーは杖の主を見つけた。


「ルシウス…」

二人の幸せを見たくないと叫んだルシウスが呪文を放っていた。
叶わなかった夢を叶えてゆく二人に憤り、感情をむき出しにしてアーサーの胸を叩き、訴えた。
しかし、だからこそ誰よりも二人を見つめ、そして二人の幸せを願っていた。

アーサーはルシウスの姿を見つめ、立ち上がった。

ルシウスの願い、そして、アーサーの願いだった。
39/46ページ