アイリス 鹿猫
それは教会でも会館でもない、小さな建物だった。
誰にも認められない恋人たち、新しい世界の孤独な住人たちがその建物には集う。
白い外壁をよく見ると、ひとつひとつ集められた小さな貝がたくさん埋め込まれている。そして細長い扉は、気軽に冷やかそうとする客を拒んでいる。
中へ入ると、オウム貝の内部のように奥へと広がり、高い天井窓からはやわらかな光が差し込んでいる。
その明るい空間は、現実を現に変えるほど美しかった。
「一緒に歩くのか?」
建物と繋がった部屋でセブルスが言った。
「もちろん!だってこの一度目は、君のお父さんもお母さんも来ていないし…」
「誰が来ているんだ?」
「アーサー先輩、ルシウス先輩もいたな、エイブリーやマルシベールも、ピーターも、建物の管理人も何人かいるみたいだ」
セブルスはジェームズの説明に耳を傾けながらも、その姿を直視できずにいた。
純白のフロックコート。
その計算された服は、バランスの良いジェームズの体格を一層美しく際立たせた。
そして、ジェームズの姿よりも、自分の姿を直視できなかった。
純白のウエディングドレス。
スカートは足先まで隠していたが、セブルスには気恥ずかしくてたまらなかった。
「バレリーナみたいだよ」
セブルスの表情を読み取ったリーマスが、耳元で囁いた。
「とても綺麗だ」
今度は四人に聞こえるような声で。
セブルスが顔を上げると、ジェームズとシリウス、リリーもセブルスを見つめて微笑んでいる。
「始めましょう」
リリーが前へ出た。手にはゴブレットを二つ持っている。
セブルスはリリーの瞳を見つめ、ゆるぎない輝きを見て取ると、自分の黒髪を数本抜いた。