アイリス 鹿猫
「いい?」
ポッター家で四人は輪になるように立っていた。
ジェームズがセブルスの手を取る。
二人の手元に杖を当てるのはシリウスに決まった。
シリウスとリーマスが向かい合い、頷き、シリウスはセブルスとジェームズに顔を合わせ、頷いた。
ジェームズが口を開いた。
「セブ、君は僕の誓いに応えてね…」
「…分かった…」
セブルスがうつむきながら頷いた。
「セブルス…君は僕の伴侶として生きることを誓ってくれますか?」
「…誓う」
シリウスが杖を振り下ろした。
「セブルス…僕たちは結婚する」
「…ああ」
セブルスは頷いた。
「セブルス…たとえどんなことがあっても、僕が君を忘れないように君も僕を忘れない」
「…ああ…」
「キスは一日に最低三回、ベッドは三日に最低一度」
「…あ…ああ?」
セブルスは顔を上げ、ジェームズを睨み付けた。
「断る!」
「誓ってよ~」
ジェームズが重ねた手をにぎにぎとリズムよく掴み、甘えた声を出した。
「次!」
「じゃあ、デートは最低週に一回、キスは三回、ベッドは一回」
「デートが増えただけじゃないか!!」
「誓ってくれないともっと増やすよ」
ジェームズは得意顔で漆黒の瞳を見下ろした。
セブルスの眉間に皺が寄った。
「…これは破ったらどうなるんだ?」
「死ぬね」
セブルスはいっそ死んだ方がましだと思った。
「…誓おう…」
渋々頷く。
ジェームズはたまらず、嬉々として白い手に何度も口付けた。
セブルスが思い切り身を引き、ジェームズの頭を叩く。
ジェームズはひとしきり笑ったあと、深呼吸をした。
「セブルス…たとえ僕が死んでも、君は生きること」
部屋が全ての動きを止めたように静まり返った。
「………は?…ジェームズ?」
セブルスはジェームズの顔を凝視した。
そこには真剣な眼差しに微笑みを浮かべる顔があった。