アイリス 鹿猫
「はあ…はあ…お義父さん…僕はセブルスを愛しています…誰よりも…誰よりも…自分よりも…愛しています…だから…セブルスを僕に…彼と結婚する許しを下さい!!」
トビアスが肩で息をしながら睨み付けた。数日間走り回ったせいで、暴言を吐く思考も失せていた。
「ゼエッ…ゼエ…駄目だ!!貴様に…貴様なんかに…幸せに…セブルスを幸せにできるものか!!どんなに俺たちがセブルスを愛しているのか…」
トビアスは体力の限界で膝をつき、ジェームズを睨んだ。
ジェームズは息を整え、大きく深呼吸した。
「お義父さん…僕は彼を幸せにします。僕もそれで幸せになれるんです。それに、あなたたちがどんなにセブルスを愛しているのか知っています」
静かに言うと、トビアスに近付き、その傍らに膝をついた。
「知っているからこそ言わせてください…。僕はそれ以上に彼を愛しているという自信があります」
「…このへらず口が」
トビアスが擦れた声を出した。
「光栄です」
トビアスは深いため息をついて尻をつき、座り込んだ。
「歳だな…貴様を投げ飛ばせなかった…」
「いえ…立派ですお義父さん。僕はずっとあるスポーツをしていましたから、人一倍体力はあるんです」
「…サッカーか?」
「…いえ、何ていうか、箒に乗ってプレイする…サッカーみたいなものです」
「分からんな…」
「観に来て下さい」
トビアスが初めて微笑んだ。ジェームズは照れて笑った。
「あなた…ジェームズ…」
アイリーンが静かに階段を昇ってきた。そして座り込んだトビアスの傍らに膝をつき、両肩を抱き寄せた。
トビアスはアイリーンの目を見た。
「アイリーン…シャンパンを買ってこい…それからグラスも一つ。うちには三つしかないはずだからな…」