月色の蹄 鹿猫
「その時の寂しそうなハシバミ色が忘れられなかった」
セブルス…手を繋ごう…。
無邪気に、ただ愛する者の手を取って歩く。
人ごみの中でさえ。
好奇な眼差しの中でさえ。
手を離せジェームズ…変な目で見られる。
手を繋ごうセブルス…。
すまなかった…ジェームズ…。
手を繋いでやればよかった。
人ごみの中でさえ。
好奇な眼差しの中でさえも。
お前の手を握って歩いてやればよかった。
歩く牡鹿に寄り添うように雌鹿が歩く。
セブルス!今度は女に生まれてよ。そしたら誰も何も言わないだろ?僕が女でもいいよ、セブルスなら!ね?
「その日から私のパトローナスは雌鹿になった」
「パパはそれから…?」
ハリーは聞いた。
セブルスは口元に笑みを浮かべた。
「あいつがそんなことで諦めるはずはない。次の日には同じように手を取って歩いた…」
ハリーはくすくす笑った。セブルスの頬が赤く、憮然としながらも照れているのが分かった。
セブルスはおもむろに杖を出した。
ハリーもその意図が分かり、立ち上がると杖を構えた。
静かな部屋の中に、銀色に輝く牡鹿と雌鹿が寄り添い、ゆっくりと部屋を歩き回った。
end.
魔夢様に捧げます
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