月色の蹄 鹿猫
「君らしい…。それとも服でも買いに行くかい?僕がセレクトするよ!おすすめはセーラー服とか、だぶだぶの膝まであるワイシャツとか、チャイナ服…真っ白なウェディングドレスなんてのも…」
ジェームズが言い終わらないうちに、セブルスは数百メートル先を歩いていた。
「ね、セ~ブ♪」
「服は買わん」
「そう?」
二人は並んで歩いた。
セブルスがいつも好んで入る薬草専門店まではまだ距離がある。
ジェームズはセブルスの手を握った。
「ジェームズ…」
セブルスは目のやり場に困った。
店のガラスを見れば、手を繋いだ男が二人歩いている。
目の前から歩いてくる人々の中には、あからさまに二人の手元を見、そして、顔を見る者もあった。
セブルスは急に居たたまれなくなった。
「ジェームズ…」
小さなその声でさえ、ジェームズは聞き逃さない。
「どうしたの?」
「手を離せ…変な目で見られている」
ジェームズは一瞬不思議そうにセブルスの顔を見た後、何かに気付いたようだった。
「そっか…ごめんね…」
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