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月色の蹄 鹿猫


「ママ~!!」

「先生と呼べポッター!!」

セブルスの研究室に飛び込んできたハリーの第一声にセブルスが一喝した。

「じゃあ先生も僕をハリーと呼んでください」

「…生徒の分際で私に指示をするのか…グリフィンドール…」

「あ~…先生、私事で減点していいですか~?」

「…………」

セブルスは急に背が伸びたハリーの顔をひと睨みした後、ため息をついた。

「近頃ジェームズに似てきたな…」

「そうなんです♪」

セブルスは久々に殺意を抱いた。
口元がぴくぴくと動いている。

ハリーはそんなセブルスの顔を見やり、嬉しそうにその痩身を抱き締めるとすぐに放して微笑んだ。

セブルスは大人びてきたハリーの、ジェームズに生き写しの姿を見て、複雑そうな顔をした。けれども、ジェームズとハリーを重ね合わせず、ハリーはハリーとして見つめていくという姿勢は崩さず、また、その僅かな決意と動揺は表情に出ることはなかった。

「…それで?今日は何の用事だ?」

セブルスは目の端でハリーの姿を捉えながら背を向け、二人分の紅茶を淹れた。

「守護霊を出せるようになったんです!」

「そうか」

素っ気ない返答をしつつ、手元に落とした視線は優しかった。
ふと、視界に銀色の光が飛び込んできた。
それは紅茶の注ぎ口を光らせ、セブルスの手は止まった。

顔を上げると、窓辺に銀色の牡鹿が佇んでいた。
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