Baby Don't Cry 猫&子世代
「あ…」
僕は声にならなかった。
もっと彼の声を聞きたい。静まり返った夜の中で、もっとその声を聞きたかった。
僕は無言で頷いた。
「なぜ戦わない…?なぜ逃げない…?」
か細い声はとても甘くて、やさしくて、僕は思わず両腕を伸ばした。
セブルスが僕の胸に収まる。
彼の鼓動が僕と重なって、不思議な気持ちになった。
「…ありがとう…」
「…昨日…見てた…」
「…そうなんだ…」
僕は膝の上にセブルスを座らせた。
きっとセブルスは昨日、僕が手紙を受け取るのを見ていたんだ…。…ってもしかして眠っていないのかな…?
「昨日、眠れなかったの?」
「……」
セブルスがうつむいた。
「不安だった…?…えーっと…怖かった?」
白い肌に赤く見える小さな唇がきゅっと結ばれる。
僕はふと、愛しい人の言葉を思い出した。
その人が教えてくれた。そして、セブルスが教えてくれた。
「セブルス…人は独りでは生きられない…だから、こわがっていいんだ…こうやって、甘えてもいいんだ…本当に強い人間なんていないよ。強くありたい、そう思う人間しかいない…それにね、本当に強い人間は、自分の弱さを知った人間なんだよ…」
細い、折れてしまいそうな腕が、僕の首にきつく絡まった。
「……?」
「……こわい」
「……うん」
僕は小さな背中を手のひらで撫でた。
それからセブルスは枕を抱きかかえて、僕のベッドに潜り込んだ。
「君はどこから来たの?」
「…スピナーズ・エンド」
「んー…聞いたことないなあ…どんなとこ?」
セブルスは首を振った。
「兄弟いる?」
また細い首を振る。
「そっか…僕もいないよ」
僕たちはいろんな話をした。
ほとんどセブルスに僕が話をしていたのだけれど…。
ホグワーツの話、飛び回る蝿を撃ち落す呪文、箒に乗る気持ちよさのこと…いろんな話をした。
毛布をかぶって、ひそひそと話をするのは、まるで秘密を共有しているみたいで楽しかった。
僕たちは少しじゃれあって、眠りについた。