The Lovers エブマル
「ブラックか…しかも一人だ…」
セブルスは座ったまま、シリウスの姿を見つめた。
「ブラック」
「うわッ!!なん…なんだよ!…スネイプか…」
突然声をかけられ、シリウスは飛び上がった。
「お前ら何やってんの!?昼寝!?」
シリウスは座り込んだセブルスと、目を閉じて横になっているマルシベールを交互に見下ろした。
「違う…マルシベールが呪いでやられた。医務室まで運びたいんだ。手伝ってくれ」
「はあ!?何で俺!?」
「そこにいるからだ」
「…俺もうここから消えるよ…」
セブルスがじっとシリウスの顔を見上げた。
「ああ~!!」
シリウスが頭を掻きむしり、マルシベールを担ぎ上げた。
どかどかと大股で歩くシリウスに、小走りしながらセブルスが着いて来る。
シリウスはそんな様子を目の端で捕らえると、速度を緩めた。
思わず顔を上げたセブルスと、灰色の目が合う。
シリウスは顔を背けた。
「お前さ…」
「何だ?」
「鏡見たことある?」
「貴様、僕に喧嘩を売っているのか!?」
「……もういい…」
シリウスは気まずそうに目を逸らせ、ため息をつくと、マルシベールを担ぎ直した。
「こいつといつも一緒にいるあのでかいのはどうした?」
「僕が知るわけないだろう…」
「…お前らって、冷たいのか熱いのか分かんねえな…スリザリンはそうなのか?」
「…フン…本当に冷たい人間は、笑顔で世間を渡れる奴らだ」
シリウスはセブルスの言葉に思わず笑みがこぼれた。
セブルスは笑うのが苦手だった。
シリウスの見惚れるほど整った綺麗な笑顔にセブルスは目を伏せた。
「貴様は笑わない方がいいな」
「…?」
「人を魅了しやすい」
事実を事実のままに言うような口調だった。
シリウスが消えた。
「ブラック!!何で貴様が倒れるんだ!!」
セブルスは二度目の大声を出した。