The Lovers エブマル
翌日もその次の日も、エイブリーとマルシベールの仲はそのままだった。
エイブリーはいつものように食事を摂り、授業に出る。フクロウ便も毎朝届く。
マルシベールはいつも以上にあちこちで諍いを起こしていた。
そんな午後、セブルスの元に下級生がパタパタと走ってきた。
それは可愛らしい女の子で、セブルスに見下ろされ、頬を染めて通路を指差した。
セブルスが足早にローブをはためかせ、教えられた通路を目指した。
いくつか角を曲がり、人気のない通路に辿り着くと、その隅にマルシベールが倒れていた。
「マルシベール!」
うつ伏せのまま、呼びかけにも応じない。セブルスは体を揺すり、肩を掴んでひっくり返した。
眠っているようだった。
下級生の女の子は小さな声で、マルシベールが上級生に喧嘩を売ったこと、そして呪いをかけられて倒れたことを説明した。
「馬鹿か貴様は!!」
セブルスの声に女の子は飛び上がり、慌てて走り去ってしまった。
セブルスはそれには気付かず、マルシベールを叩き起こそうとしたが、どんな呪いでこうなったか分からない。
一人で抱えて医務室へ行けるほど、セブルスの体力はなく、誰かが近くを通るのを待つことにした。
「…表現の違いか…表現が様々だから…読み取るのも一苦労だな…」
セブルスは目を閉じて床に横たわるマルシベールの顔を見つめ、そっと独りごちた。
廊下は静まり返り、時々涼しい風が髪をなびかせる。
-…自分の心を真直ぐに伝えることができたなら…そして、フィルターを誰も持たず、持っていても、色も着けず、いつも磨き、そうやって分かり合えたら…
マルシベールの金髪の巻き毛が風に揺られ、瞼にかかる。子供そのものの表情を眺めながらため息をついた時、遠くからシリウスが歩いてきた。