The Lovers エブマル
「分かる気がするなあ…求めすぎる気持ち…ッ…マルシベールの恋人…本当に難しそうだね……って…ねえ…聞いてる?セブ…」
ジェームズは乱れたセブルスの黒髪を指で払いながら、上気し、息が上がった頬に口付けを落とし、ベッドを軋ませた。
セブルスがびくりと体をしならせた。
「…貴…様…あぁッ…」
「…何?」
熱い吐息で全身を占めてゆく快感に耐えながら、ジェームズは露わになった胸元から肩に唇を寄せ、自分を睨み付けている漆黒の瞳を見つめた。
「…貴…様…話すか…んッ…どっちかに…しろ…」
「話すか…何?」
セブルスは首を振った。ジェームズが笑みを浮かべる。
「話すか、やるか、どっちがいい?セブルス…」
動きを止め、余裕を失った愛しい顔を眺める。
セブルスは、悪戯っ気を含んだハシバミ色の瞳を眉間に皺を寄せて睨んだ。
ジェームズは開かせた白い足を撫でながら、緩やかに腰を進めた。
最も感じる場所まで届かないような浅い挿入を繰り返す。
「…んッ…あッ…ジェー…ムズ…」
「うん…」
しなやかな腕が伸ばされる。
セブルスは快楽に呑まれながら、ジェームズの耳元に甘い懇願を囁いた。
「僕には、マルシベールの気持ちが分かるよ」
ジェームズが言った。
「求めすぎる気持ちがか?」
「…聞いてたんだ」
「当たり前だ」
「なんだ、聞こえないくらい夢中にさせたかったな」
ジェームズはセブルスを抱き寄せた。
セブルスが腕を振り払って背を向けた。
「表現の違いだよ…」
華奢な体を抱き締めて、ジェームズは話しかけた。
「たぶん二人の想いは一緒なんだ…」
「お前には見えるのか?」
「ううん…見えない…」
ジェームズは腕を放した。
「そうだったらいいなって…もちろんきっと違うかもしれない」
セブルスは振り返った。
「違うだろうな…想いにおいて相手と自分が同じ強さだと感じるのは思い込みに過ぎない」
薄暗い中に端正な横顔があった。ハシバミ色の瞳がセブルスと交わる。
セブルスは体を起こすと、ジェームズに覆いかぶさり、触れるだけのキスをすると、そっと微笑んだ。そしてすぐに体を離したが、ジェームズにすばやく抱き締められた。
「僕は君より君の事を想っているよ」
暗くても耳まで赤くなっている恋人に、ジェームズは啄ばむようなキスを繰り返した。