The Lovers エブマル
「それで…落ちなかったわけか…」
セブルスはマルシベールの額に杖を当て、尖った先端でぐりぐりと押した。
「痛たたた…セブルス!!オレの眉間を割るつもりか!?」
「できればそうしたいものだ…そうすれば服を元に戻し、乾かす呪文が出てくるかもしれない」
冷静な声にマルシベールはふてくされた。
そして自分の胸元を見下ろし、汚れた服を見つめた。
「ガキみたいだろ?オレ…」
「ああ」
マルシベールは初めて寂しげな微笑みを浮かべた。
セブルスは黙々と杖を振り、灰色のシャツを元に戻し、濡れた制服を乾かし、最後に零れる涙を風で拭った。
賑やかな夕食の席で、生徒たちはマルシベールが来ていないのかと勘違いした。
セブルスを中心に、彼の右側にエイブリー、左側にはマルシベールが座っている。
三人は黙ったままスープを飲み、手元を見つめている。
セブルスはパンをちぎりながらマルシベールの様子を窺った。
ずっとうつむいたまま、スープを悪戯に掻き回している。
エイブリーは黙々と食事を続け、彼だけが何一つ変化がなかった。
「セブルス、マルシベール…食べ終わったか?」
エイブリーの静かな声に、セブルスは相槌を打ち、立ち上がった。
「マルシベール?」
エイブリーが声をかけたが、マルシベールは反応しなかった。
エイブリーは一人で食堂を後にした。