The Lovers エブマル
「何かを…」
エイブリーの声に、セブルスは頭を傾けた。
「何かを盲目的に愛するのは危険なことなんだ…運命が狂う…」
「それも運命なんじゃないのか?」
エイブリーはセブルスの顔をまじまじと見つめた。
藍色の瞳が僅かに見開かれ、セブルスは思わずパチパチと瞬きをした。
クツクツと声がする。
エイブリーが笑っていた。
握った手を口元にあて、うつむきながら笑っている。
セブルスは初めて見るエイブリーの笑顔を食い入るように見つめた。
「お前が笑うのを初めて見た…」
セブルスが呆気にとられて言う。
エイブリーは口元に笑みを残したまま一息吐くと、セブルスを見下ろした。
「俺だって人間だ…笑うことだってある」
「そうか…」
セブルスはふと、エイブリーの顔を見た。
-……忘れていたわけではない…けれども、誤解をしていた…無表情に見えるから、情も薄く見えるが…-
「すまない…」
「…?何がだ?」
「お前はもっと冷たい人間だと思っていた」
エイブリーは寂しげに微笑んだ。そしてすぐにいつもの顔に戻った。
「セブルス…あいつは裏表がない…いつも感情をさらけ出して…まるで犬のように…」
「犬も必死だぞ…ご主人様に好かれようと…」
「…困る…あいつはそのままでいい…」
夜の帳が冷たい風を運んできた。
エイブリーはローブのポケットに手を入れ、セブルスに背を向けると歩き出した。
「…必死か…案外、俺の方が必死だ…」
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