The Lovers エブマル
医務室ではセブルスがマダムポンフリーのお叱りを受けていた。
うんざり顔のセブルスを遠くからリーマスがくすくす笑っている。
セブルスはリーマスをひと睨みすると、エイブリーの苦労を思い知り、心の中でため息をついた。
「それで…マルシベールは?」
「…明日には目が覚めるそうだ」
「ふうん…」
二人はベッドで眠っているマルシベールを見下ろしていた。
「さっき、扉の向こうにエイブリーが来ていたね」
「…そうか…」
セブルスはローブを翻して医務室を出て行った。
「友達思いだね」
リーマスは嬉しそうにセブルスの姿を見送り、マルシベールの顔を見ると、いつもの椅子に腰掛けた。
黒いローブが行き交う中、セブルスは背の高い黒髪の男を見つけた。
流れる人波の中で一人、こちらを見て立っている。
無表情の中に深い色を湛えた目が、じっとセブルスの姿を見つめている。
「エイブリー」
セブルスが人波を避けながら口を開きかけた時、エイブリーは軽く視線を送り、背を向けて歩き出した。
セブルスは無言のままエイブリーの後ろをついて歩いた。
渡り廊下に夕暮れの冷えた風が吹き、セブルスの黒髪が揺れた。
遠くの森はすでに闇に沈んで黒くなり、空が淡い紫に染まっている。
「エイブリー…お前がいつもやりとりしているあの手紙は何なんだ?」
セブルスはマルシベールが怒る原因になった、エイブリーが最優先させている手紙について聞いた。
エイブリーは黒い森の際から飛び立ってはまた森へ吸い込まれるカラスたちの群れをじっと見つめていたが、セブルスの言葉に視線を動かした。
切れ長の目が、見事な漆黒の瞳を射る。
セブルスはエイブリーの瞳を見つめた。
そして、エイブリーの瞳が黒ではなく、藍色をしていることに初めて気がついた。