ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作


白い鳥が飛んでいる。
その青い瞳は、何かを見つけたようだ。









どうして、
あんな言葉しか吐けないのだろう…?


ずきずき、胸が痛んだ。
そんな所に心なんてないはずなのに、息ができなくなるくらい何かが締め付けられている。

思わず深呼吸しようと、顔を上げたその時だった。
レギュラスの瞳に白い紙片が映る。

手元に落ちた手紙には、青いインクで文字が綴られていた。



「…夜八時…、屋上の植物園…?」



差出人の名前がないことに、やけに胸の奥が疼いた。
ほんの数分前口論していた自分とそっくりな顔が脳裏によぎる。

まさか、そんなわけ…。


その時だった。
手紙がふわふわと波うって元の鳥の形に戻る。



「あ、待って…」



レギュラスの止める声も聞かず、鳥は簡単に浮かび上がって窓の外へすぃーと飛んで行ってしまった。



「…夜…八時…」



レギュラスは思わず、腕時計を確認する。
















「ジェームズ!リーマス!…ピーター!…」


寮部屋に戻って来たはいいが、部屋には誰もいなかった。



「なんだよ…誰もいねぇのかよ…」



こっちは、最悪な気分だってのに…。

シリウスは、手近なジェームズのベッドに倒れ込んだ。
悪戯のおもちゃやら、リーマス専用の菓子やらで賑やかなハズの部屋も、どうしてか今は閑散と映ってしまう。
深いため息を吐くと、そのままずるずると地面に埋まってしまうような気がした。



「……リーマス…」



こういう時は、いつも彼が傍にいてくれるのに。
今日はホントに運が悪い。

ささくれ立った心を穏やかに包み込んでくれる、そんな彼の優しさが欲しかった。

談話室にも寮部屋にもいないってことは、…図書室か…隠し部屋だろうか。
シリウスはのっそりと起き上がって、ジェームズの枕の下にある忍びの地図を手に取った。
愛しい名前を探すべく、目をこらす。



「リーマス、リーマス、リーマス…と」



その時だった。
バサバサ。
突然、耳に入った音に顔を上げると何か白いモノが開けっ放しの窓から飛び込んできた。
青い何かが、キラリとシリウスの瞳を捉える。

それは、空中で器用に姿を変えると、開け広げた忍びの地図の上にパサリと落ちた。

手にとって見れば、手紙である。



「…ンだよ、またか…」



最近しつこく手紙を送ってくるハッフルパフの女生徒がいるのだ。
返事なんて返したこともないのに、ご丁寧に毎度毎度熱い想いを届けてくださる。
文字通り暑苦しいことこの上ない。
そのうち諦めるだろう、と特に気にしていなかったのだが…また送ってくるとは面倒な奴である。

シリウスは手紙をぽいと放り投げた。
今はそんなどこじゃない。
一刻も早く、リーマスの甘い声を聞きたかった。

ところが、



「うわ、なんだよ!しつけーな!」



放り投げたハズの手紙が、鬱陶しいくらいにバタバタ羽ばたいてシリウスの目の前に再び落ちる。



「…なんだよ…もう、後にしてくれよ…」



精一杯睨み付けてやったが、断固読むまで動くまい、と手紙は目の前に鎮座していた。

仕方なくシリウスは手紙を開けた。



『あなたが思っている以上に私はあなたを愛しています。
素直に飛び込むことが許されないもどかしさ、それ以上に自分を戒めてしまうこの心に、今こそ終止符を打ちたい。

夜八時に屋上の植物園であなたを待っています』





「はぁー?呼び出しかよー…」



めんどくせぇ、と思わず手紙を丸めると突如ビクビクと紙面が波打った。
鳥の形に戻ったそれは、激しくシリウスの頭をつつきだす。



「いて、痛いっ…!痛いっつの!わーかったからっ!行くっ!行くって、や、やめろっ!」



無我夢中でそう叫ぶと、鳥はいちよう納得したらしい。
フンと、極めつけにシリウスの眉間をバチンと叩いて、さも満足したように窓の外へと消えて行った。



「くっそー、なんだよ…あのバカ鳥…」



シリウスは大きくため息をついた。



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