ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作
「なんだよ」
「なにが」
「なにがって…」
「そっちこそなんなんだよ」
「それはオレのセリフだろっ」
「な、僕だって…!」
廊下で言い争いが響いていた。
似た背格好の二人が肩を並べて、疾駆している。
他生徒たちは皆、あまりの剣幕に思わずその二人組に道を譲ってしまう。
「うるせーな、ついてくんなよ!」
「そ、そっちがついてくるんだろ!」
「オレはこっちに用があるんだよ!」
「僕だって用がある!」
「だったら別んとこ通れよ!」
「そっちこそ!僕はここを通りたいんだ!」
「んじゃあついてくんなっつの!」
「だからついてくるのはそっちだっての!」
「こんのやろー!生意気だぞ!」
「はっ生意気!?あんたこそ…!!」
二人が同時に立ち止まった。
互いに睨み合うが、どちらも怒鳴りながら早歩きをしたせいで肩で息をしている。
ふと、赤色のネクタイをしている─シリウスが言った。
「お前…、兄貴を“あんた”呼ばわりかよ」
シリウスの棘のある口調に、緑色のネクタイをつけている─レギュラスの表情が少し曇った。
「…家出てったあんたなんかを、なんで兄貴呼ばわりしなくちゃならない…!」
兄に負けず、負けん気な灰色の瞳が同じ灰色の瞳を射抜く。
シリウスは思わぬ反撃を食らったことに、たじろいだ。
「………」
「………」
気まずい雰囲気が立ち込め、二人して沈黙する。
言い負かしたはずのレギュラスでさえ、胸がチクチクと疼いてしてやったりの気分にはならなかった。
ちらりと兄を見やると、兄の端正な顔はつらそうに歪められている。
「…好きで…出てったんじゃねぇよ…」
ぼそり。
零した、そんな彼の言葉に心臓をつかれた気がした。
シリウスはクルリと背を向け、ひとり先へと歩いて行く。
どこか寂しげなそんな兄の背を、レギュラスは茫然と見続けるしかなかった。
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