ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作
「あの、食べます?」
思いついたようにポケットから板チョコを出し、アーサーに勧める。
アーサーはくすくす笑った。
「ありがとう…いただくよ」
リーマスは嬉しそうに板チョコを半分に折り、手渡した。
「甘いものを食べると幸せな気持ちになるね」
アーサーが明るく言う。
リーマスは板チョコを両手で持ち、かじりながら頷いた。
「心当たりはあるの?」
「…いえ…」
「シリウスじゃないのかい?」
アーサーは気遣うように囁いた。
「いえ…そうかもしれないけど…シリウスはあんな手紙は書かないし、書く前に…」
リーマスの顔がにわかに染まった。
「確かに!」
言葉尻を察し、アーサーは笑った。
「僕は…」
アーサーは笑いを鎮めると、リーマスの小さな声に耳をすませた。
「僕はこういうの慣れてないんです…誰かから想われるなんて…」
「嬉しくないのかい?」
「…嬉しくないです。人を想う気持ちが嫌ってほど分かるし、応えたくても応えられなくて…かっこよく振舞えないし…」
「喜ぶべきだよ」
アーサーの言葉にリーマスは顔を上げた。
アーサーは微笑んでいた。
「相手は君を困らせたくて想っているわけじゃない」
「…でも喜べません…」
「そうだね」
アーサーはチョコレートをかじった。
「ん~…これだけは言えるよ」
「……?」
「絶対に謝らないこと」
アーサーが人差し指を立て、リーマスの瞳を見つめた。
「人を想うのは悪いことじゃない。その想いに応えられないのも悪いことじゃない…誰も悪くはない…それが恋だ」
リーマスは頷いた。
「それに…君は気持ちを弄ぶ人間じゃないしね」
アーサーはリーマスの肩に手を置き、その手を放し、立ち上がった。そして階段を降り、振り返るとリーマスを見上げた。
「ご馳走様…そうだ…甘いものを食べ過ぎると涙もろくなるよ」
「本当ですか!?」
「嘘だ」
背を向けたまま、ひらひらと手を振る。
リーマスはその姿を見送ると、残りのチョコレートをかじろうとしたが途中でやめ、丁寧に銀紙に包んだ。
_