ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作


甘いものを欲するのは、愛情に飢えている証拠だと昔誰かに笑われた。


「浮かない顔だね」

アーサーの声にリーマスはびくりと顔を上げ、振り返った。

「背中に憂いがあった」

廃墟のような外階段をアーサーがゆっくり下りてくる。
踊り場に風が小さく渦巻いた。

リーマスは階段に腰掛けたまま体を少しずらし、アーサーが隣に座るのを黙って見つめた。

「ラブレターかな?」

手元を覗き込んできたアーサーの落ち着いた声色に自然と緊張は解け、手紙を広げたまま、リーマスは頷いた。

ふわりと赤い髪と胸元から違う香りが鼻を掠めた。

「マルフォイ先輩…」

リーマスは思わず呟いた。
アーサーの胸元から香ったのはルシウスのものだった。

「君は…」

「僕は人一倍鼻が利くんです」

ー…人狼だから…

リーマスは目を伏せ、小さな声で謝った。

「いや…君ならいいんだ」

アーサーはネクタイの乱れを気にするように胸元に手を当てた。

「ところで、それ…」

「はい…もらったんです…あっ!」

手紙がはばたいた。
瞬きをする間もなく、手紙は白い鳥になり、城の中へ逃げていった。

「追わなくていいのかい?」

俊敏に立ち上がったアーサーは、リーマスの明るい茶色の髪を見下ろした。

「いいんです…追ったって…」

差出人のない手紙。
自分が思っている以上に愛しているという内容。
飛び込みたくても許されないという。
それはリーマスには痛いほど理解できた。

「誰からか分からないんです」

リーマスはすがるようにアーサーを見上げた。
アーサーは何も言わず、リーマスの隣に座り直した。
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