ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作
「エイブリー、誰か走ってくる…!」
マルシベールはエイブリーの腕を掴んだ。
茂みに身を隠すより早く、細身の少年が泣きながら猛ダッシュで横切った。
「あれ?セブルス…?」
走り去る体格とやわらかな黒髪は、見慣れた姿だった。
「お~い!セブルスー!」
大声で呼び掛けたが、あっという間に見えなくなってしまった。
「セブルスも来てるんだ…。エイブリー!まさかあの手紙は馬鹿とセブルスの?」
馬鹿とはジェームズのことである。
「さあ…とにかく中央の広場を目指そう…そこへ行けばわかる…」
エイブリーの冷静な声を無視し、マルシベールはいくつもある扉の一番近くを乱暴に開け、駆け込んだ。
「くそっ!何だこれ!」
薄いベールがドームの入り口に何枚も垂れている。
マルシベールは両手をバタバタと振り、ドーム内へ足を踏み入れた。
青い蝶が飛び交い、視界を遮る。
大きな葉を除けると、そこにはジェームズとシリウスが立っていた。
マルシベールは目を見開き、二人を凝視した。
何やら言い合っている。シリウスが首を振り、ジェームズの両肩に手を置く。
ジェームズは困ったように顔を覗き込み、二人は見つめ合った。
「お前らそういう仲だったのかあああ!!」
マルシベールが吠えた。
シリウスがびくりと振り返り、マルシベールを見下ろした。
「見てたのか…?」
邪険そうに呟きながらも、その顔には焦りがみえる。
「ああ、見てた…セブルスが泣いてたぞ!」
マルシベールの言葉にジェームズが前へ出たが、すでにシリウスがマルシベールの蹴りを受けていた。
「痛ってー!この猿!」
「うるせえ!この色魔!」
「なっ!しき…」
二人は杖を出すことも忘れ取っ組み合いのケンカを始めた。
シリウスがヘッドロックをかける。
「ぎゃあああ!いだだだ!くそっ!放せ!」
「放すかよ!俺は今虫の居所が悪いんだ!」
マルシベールは必死に頭を抜くと、近くにあった台座から昆虫用のフルーツを掴み、投げ付けた。
「うわっ!てめっ!臭っ!」
シリウスも負けじとフルーツを握り、投げ付け、マルシベールが避ける隙を狙って再びがっちりとヘッドロックをかけた。
マルシベールはバックドロップで応戦しようと躍起になっている。
「ねえ、セブルスが泣いてたって本当?」
ジェームズは唯一話ができそうなエイブリーに話しかけた。
「本当だ、泣きながら走っていた」
ジェームズは駆け出そうとしたが、エイブリーに呼び止められた。
そして、白い鳥の手紙がマルシベールのもとに届いたことを話した。
「じゃあ、僕、シリウス、それに君たちも同じ手紙を…?」
「俺たちだけじゃないかもしれない…」
エイブリーは腕時計を見た。
「そろそろ八時だ…中央広場へ行こう…それにしてもマルシベールはともかく、ブラックはどうしたんだ…?まるで八つ当りだな」
エイブリーは杖を出し、二人を弾き飛ばした。
「行くぞ」
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