ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作
鬱蒼と茂った熱帯植物。
遠く夜空も盛んな植物に覆われて、まるで別世界のようだった。
綺麗な紫色に発光している花や、ぽつぽつと光の玉を吐き出しているもの、夜間でもここは幻想的な光に溢れている。
8時にはまだ幾分早かった。
しかし、リーマスにとってはいてもたってもいられなかったのも事実。
さすがの悪戯仕掛け人でもこんな時間の植物園にはめったに寄りつかないので、散策するのもよし…と考えていたのだが、頭の中はラブレターのことでいっぱいいっぱい。
実際は植物観察さえもままなっていなかった。
リーマスはふと、赤毛の先輩が言っていた言葉を思い出す。
──人を想うのは悪いことじゃない。その想いに応えられないのも悪いことじゃない…誰も悪くはない…それが恋だ…──
果たして、ここにやってくるのは一体誰なのだろうか。
その時だった、
「いたっ…」
どこかで聞いたことのある声。
リーマスは逸る気持ちを抑えながら歩みを早めた。
白色のドームが見えて、その中に入る。
さほど広くない空間の真ん中に黒色のローブを纏った人間がうずくまっていた。
「……セ、セブルス…?君なの?」
驚いた顔をしたセブルスが顔を上げた。
何故か涙目のまま。
「ルーピンっ…、」
「ど、どうしたの…セブルス」
「さ、サボテンの棘がっ!」
見渡せば、確かにドームは大小様々なサボテンに囲まれていた。
上擦ったセブルスの声で、彼の苦しみが手に取るように分かる。
セブルスはひたすら足首をさすっていた。
「棘にあたっちゃったの?」
「……足元には注意してなかった」
そう、不服そうに唇を尖らす姿が大層かわいらしい。思わずリーマスはくすり、と笑ってしまった。
「わ、笑うな…きさ…ま!」
「はは、ごめんごめん。セブルス、かわいくて」
「か、かわっ……!?」
途端に真っ赤になってしまったセブルス。そこでふと、ラブレターのことをリーマスは思い出した。
「ね、ねぇ……セブルス…君……」
リーマスの鳶色の瞳が、セブルスを覗き込む。
──あなたが思っている以上に…、私は…あなたの…ことを……。
「セブルス、君の…気持ちは…嬉しいんだけど…」
きょとん、としたセブルスにリーマスは気づいていない。
「ぼ、…僕、やっぱり君の気持ちには…応えられない…。僕には…シリウスがいる……シリウスが…一番、大好きなんだっ!」
頭を下げ、リーマスはそう言った。
数秒の沈黙。
リーマスには数分にも数十時間にも感じられる。
ゆっくり、頭を起こす…と。
「……」
ポカンと、口を開けたまんまのセブルス。
「……」
「……」
再び、沈黙。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
稍あって、セブルスは静かに怒りを抑えた声を出した。