ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作
「シリウス」
ジェームズの表情が明るくなった。
シリウスはしばらく声も出なかった。
「ジェームズ、お前が?お前なのか?」
「何を言ってるんだ?僕は僕だ。僕に決まっているだろう?」
ジェームズは微笑みながらパニックを起こしている目の前の顔を見つめた。
シリウスは頭を抱えた。
「ここにいちゃまずかった…?」
ジェームズが心配そうに顔を覗き込む。
「いや、ちょっと待ってくれ。まさかお前だったなんて…いや、どうしたらいいんだ?」
予想もしなかった相手に、状況を把握し、対処をしようと頭を掻きむしる。
「ついに俺たちは友情の域を越えてしまったのか…?…すまないジェームズ、俺が悪かった」
ジェームズは首を傾げた。
「なんで君が謝るんだ?僕は期待しながら待っているんだし、ちょっと早く来過ぎただけで…」
「期待!」
シリウスがよろめいた。
「いや、確かにお前は可愛い…。いい男だし。…俺だって嫌じゃない。むしろ…はっ!もしかしてお前のベッドに寝転んだのは、偶然じゃなくて俺の無意識の表れ…?」
「何をブツブツ言ってるんだい?」
ジェームズが近づく。
シリウスは思い切り後退りした。
「おま、お前はそれでいいのか!?」
目が泳ぐ。ジェームズを直視できなかった。
「僕はいいんだ。いつだって後悔しないよう待ち続けてるし、愛してる」
シリウスは手紙の内容を思い返した。
『素直に飛び込むことが許されないもどかしさ、それ以上に自分を戒めてしまうこの心に、今こそ終止符を打ちたい。』
「そうか…そんなに悩んでいたのか…素直に飛び込みたかったのか…。俺にはリーマスがいるが、わかった…一度だけこの胸を貸そう…」
シリウスはジェームズの目を見つめ、胸を張った。
「よし!来い!!」
「何が?」
ジェームズはくすりと笑い、数歩前に出た。
顔が近づく。
シリウスは覚悟を決めると目を閉じた。
蝶さえも惹き付けられた甘い香りがジェームズの身体からふわりと立ち上る。
ー…そういや、こいつの匂いはいつもこの甘い香りだ…風呂から出ても…とろけるような………芳香異体…
きつく目を閉じながらも、淡い期待と目眩を感じ、息を止めた。
「ねえ、シリウス、セブルス見かけなかった?」
「…………………は?」
シリウスは目を開けた。
ジェームズはシリウスの黒髪に留まった蝶を指先で払っていた。
「あ、やっぱりくっついてきちゃう…セブルスが来るはずなんだよね…今日手紙もらっちゃってさ~…ってシリウス?」
シリウスはがっくりと膝をつき、脱力していた。
「シリウス?」
「………しばらく話しかけないでくれ……俺は今死ぬほど恥ずかしいんだ。一瞬でもお前になびくなんて…一瞬でもちょっといいかななんて思った自分が……」
ジェームズは当分立ち上がれそうもないシリウスを不思議そうに見守った。
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