ラブレターバード 全員 ヨシダ、弥ち様合作
シリウスは大股で歩きながら、一番近くに建っていたドームの扉を開けた。
やわらかなベールを何枚か潜り抜け、鬱蒼とした木々に目を凝らす。
腕時計を見ると七時を回ったばかりだった。
「早すぎた」
待つのは性分ではなかった。
逢引きという呼び出しには相手を待たせる。それがシリウスの奇癖ともいえる美学だった。
シリウスはゆっくり歩きながら、丸い明かりを見上げた。
夕方、シリウスの下にまた一通の手紙が届いた。それはいつも手紙を送り付けてくるハッフルパフの女生徒からだった。
ー…あの内容…いつか二人きりで会いたいと書いてあった…。ということはあの手紙は…
シリウスの脳裏にリーマスの顔が浮かぶ。
結局あのままリーマスを見つけることはできなかった。
いつも遠慮がちに抱かれ、自分からは決して手を差し伸べて来ない。
シリウスは目の前を飛来した青い蝶にそっと手をかざした。
ひらひらと淡い光に翅を輝かせて舞っている。
辺りを見回すとたくさんの蝶が飛び交っていた。
ふと、甘い香りが漂い、蝶が飛んでゆく。
シリウスもまた誘われるように足を進めた。
傘のような大きな葉を押し退ける。
青白い光の中、男子生徒が立っている。見慣れた背格好からきらきら光るたくさんの蝶が一斉に舞い上がった。
シリウスは愕然とした。
そこにいたのはジェームズ・ポッターだった。
勢い良く跳ねた髪に、均整のとれた身体。
宝石のような硬質な輝きを持つ蝶が、吸い寄せられるように肩や髪に留まっている。