幸福讃歌 鹿猫
セブルスは僕を睨み付けている。
あの目はヤバい。
彼に食事をさせる前に僕が彼を食べたくなる…。ってそんなこと言ったら間違いなく吹っ飛ばされるので、僕も椅子に座り、自分の皿にスコーンを一つ乗せた。
「えー…食事とは」
僕は仰々しく咳払いをした。
セブルスが眉間に皺を寄せたまま僕を睨み続けている。
僕は指で彼の眉間を擦りながら続けた。
「すべすべだ…」
「ポッター殿、食事とはすべすべなのか?」
「いやいやいや」
僕は思わず笑った。セブルスは何が面白いのか分からないらしく、やっぱり睨んでいる。
「んー…食事とは愛だ」
「………………」
セブルスの眉間をさすっている指が、その皺が増えたことを感知した。
僕はなぜか自信が湧いた。
「セブ…愛、愛…」
「……………」
「好きな人と食事すると美味しいだろ?それから仲間だとか、気の置けない友達みんなで食事をすると美味しいだろ?ましてや好きな人が自分のために食事を作ると格別に美味いだろ?僕たちのカラダはさ、きっとそこに込められた愛だとか、幸福を敏感に感じているはずなんだ」
セブルスが今や哀れみのこもった眼差しで僕を見ている。
「ポッター…貴様いつからロマンチストに転身したんだ?」
「ん~…君に会ってから?」
屈指に入る盛大な溜息が聞こえた。
「と、いうわけで、スコーンを作りました~!!!」
「毒か?」
「いや、今スコーンって言ったんだけど」
「貴様が作ったものでろくな目に合わなかった」
セブルスの言葉に僕はあらゆる回想をした。
…確かに…媚薬然り…開心薬然り……そっか…そう言われればそうだよねえ…愛とか言っちゃったけど、それを疑うだけのことはいっぱいしてきたよねえ…。
「屋敷しもべ妖精は手伝ったのか?」
セブルスの声がした。僕は小さく頷いた。
「それなら食べてやる…」
目の前がパア~っと明るくなった。セブルスを見ると、目を逸らしている。白い頬が少し赤い。
僕は嬉しくなって、椅子をずらしてセブルスと向かい合わせになった。