幸福讃歌 鹿猫
「ねえ、君、食事を楽しんだことある?」
僕の言葉にセブルスは目を丸くして僕を凝視した。
ー食事を楽しむー
セブルスはまるで僕が外国の言葉を発したみたいに、眉間に皺を寄せて考え込んでしまった。
…やっぱり…。
僕は彼に悟られないように小さく息を吐いた。
セブルスの食事風景は至って普通だ。
別にものすごく不味そうにパンやスープを口に含んでいることもない。それどころか、静かで、品さえある。
だけど、僕にはとても機械的に見えてならなかった。
なんていうか、歯を磨くみたいに。
歯を磨くのは別に好きでやってるわけじゃないだろう?そうしないと虫歯になるとか、衛生的によくないとか、そういった理由で僕たちは歯を磨く。
セブルスはまるで、そうしなければいけない習慣や、維持する身体に付き合うためだけに食べているような感じがする。
別にそれでも間違っていないと思う。
でも僕は…。
セブルスに視線を戻すと、戻すまでもなくいなくなっていた。
「セブー!!」
僕は慌てて追いかけて、追いつく。
「ね、ご飯食べよう♪」
「馬鹿か貴様は…昼食は30分前に終わっている」
…ごもっともです。…って頷いてはいられない。
僕はセブルスをすばやく抱き上げた。
「は、放せポッター!!」
いつも通り足をばたつかせて身体を捩る。
「はいはい…もう少し待ってね」
僕はスタスタと歩きながら、必要の部屋に滑り込んだ。
セブルスを椅子に座らせる。
「ポッター!!なぜ胴体を縛るんだ!!」
だって座らせるってそういうことじゃないの?
僕は上機嫌で紅茶を注いで、スコーンを小皿に一つ盛った。
実はこのスコーン、僕の手作りだ。
屋敷しもべ妖精に教えてもらった。
おかげで今日の昼食はホグワーツ始まって以来の貧相なものになった。だって、僕に教えた屋敷しもべ妖精はほぼ総勢だったんだから。
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