ホグワーツの怪談 全員
「今のはシリウスかな…ひどい悲鳴だったな…」
ジェームズは通路脇の石段に腰掛け、あくびをしながら大きく背筋を伸ばした。
「ん~…遅いなセブルス…フェアプレイを重んじて、忍びの地図だって持ってきてないのになあ…」
そわそわと体を揺らす。
その様子をセブルスは柱の影から観察していた。
ー…あいつは僕を待っているのか…あれはマルシベールに任せよう…ー
セブルスは足音を忍ばせ、ジェームズに気付かれぬよう、勝利の松明が燃えているA通路を目指した。
A通路は細く長く、石壁は小さな明り取りが開いていたが、湿った風と、雲に隠れた暗色の空が垣間見えるだけだった。
セブルスは慎重に歩いた。
しかしその瞬間身体が浮いた。
「捕まえた♪」
ジェームズが満面の笑みを浮かべてセブルスを見下ろしている。
セブルスは必死にもがき、ジェームズの腕を振り払い、駆け出した。
ジェームズは一度見失いつつも、石像の影にいるセブルスを見つけた。
血の気の失せた白い顔が自分を見つめている。
その色付いた唇が開いた瞬間、ジェームズはその口を片手で塞いだ。
「悲鳴を上げて先にゲームから下りようなんてナシだよ」
きつく目を閉じ、首を振るセブルスに、ジェームズはたまらず壁に押し付けると、片足をセブルスの足の間に割り込ませた。
セブルスが上半身を捩る。
ジェームズはその両手首を軽々と掴むと、漆黒の瞳を覗き込んだ。
「ね、みんなが来る前にしようよ…」
体を密着させ、少し屈むと、白い頬に口付け、そのままゆっくりと唇を重ねた。
わずかに開かれた歯の間に舌を滑り込ませ、貪るように口付ける。
「ジェームズ、何をやっているんだ??」
セブルスの声が背後で聞こえた。
ジェームズは聞こえないらしく、口付けを深めている。
「ジェームズ!!」
バシリと後頭部をはたかれ、ジェームズはようやく恨みがましく振り返った。
セブルスが眉間に皺を寄せ、顔を引きつらせて立っている。
「…………あれ?」
ジェームズが間抜けな声を出した。
「そいつはボガートだ」
セブルスが腕を組んで言い放った。
ジェームズが石のように固まった。
「い゙や゙あ゙あ゙ああああ!!!!」
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