ホグワーツの怪談 全員


「くそ!!リーマスもやられたか!!」

シリウスは悲鳴が聞こえた方を振り返り、拳を握り締めると、早足で廊下を歩いた。
長い脚が石畳に靴の音を響かせる。
すれ違った女子生徒が足を止め、嬉しそうに囁きあった。

松明に照らされた通路には誰もいない。

シリウスは空き教室を覗き込み、セブルスを探した。
しかし、影も気配もなかった。

「フン…逃げたか…」

木の扉を閉め、通路の真ん中で息を吸い込み、ポケットに手を突っ込む。
その時、ゆらりと白い影が横切った。そして扉が壊れてなくなった教室へ入っていった。
シリウスは杖を抜き、その影を追った。

教室の床は埃にまみれ、長テーブルや椅子が隅で黒い山を築いている。
月の光が室内を青く照らし、壁際に見覚えのあるクローゼットが置かれていた。

シリウスの口端が上がった。

クローゼットがガタリと音を立てる。
シリウスは肩をすくめた。

「スネイプが仕掛けたのか…相変わらず学習能力がないな…」

杖を一振りし、扉を開け放った。


ふらりと頼りなげな細い足がクローゼットから覗き、コツリと靴が床に下りた。

シリウスは思わず後ずさりした。

一度目にしていても、その妖艶さ、心臓が掴まれるような疼き、それゆえに感じる恐怖は消えないらしい。

シリウスはじりじりと距離を取りながら、セブルスの姿と向き合った。

いつもはきっちりと閉じられているシャツの襟がはだけている。
真っ白な首筋から鎖骨が覗き、その下に脈打つ血管まで見えるようだった。
華奢な肩が揺れ、息を吸い込み、潤む瞳がシリウスの瞳を捕らえ、小首を傾げてみせる。

シリウスは杖を握り締めた。しかし、ふと、ある考えが浮かんだ。
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