ホグワーツの怪談 全員
夕食のテーブルではマルシベールがニヤニヤしながらスープをかき混ぜていた。
その隣でセブルスが溜息をつく。
「マルシベール…僕は今夜は本を読みたいのだが…」
「ダメ~」
スープにちぎったパンを4かけ入れ、スプーンで順々に沈めている。
「今夜は我がスリザリンの積年の恨みを晴らすのだ」
スリザリンはクィディッチで今年もグリフィンドールに負けていた。
聞く耳を持たないマルシベールに、セブルスは観念したようにスプーンを手にした。
「セブルス、手加減すんなよ」
マルシベールが釘を刺した。
曖昧ながら返事をしたセブルスを確認し、エイブリーを見上げる。エイブリーは無表情のまま食事を続けていた。
肝試しは夜間外出禁止のため、消灯前の三時間と決められた。
グリフィンドールのヒーローであり、随一の悪戯仕掛け人のジェームズ、シリウス、リーマス、ピーターに、スリザリンの喧嘩頭マルシベール、そして密かに恐れられている無表情のエイブリー、何かと噂の絶えないセブルス、合わせて7人が一階の大広間に集まっている光景は、それだけで不穏な空気をもたらせた。
「じゃあ、まずクジで対戦相手と階を決めたら一度寮へ戻って30分後に開始だ」
マルシベールが不敵な笑みを浮かべ、ゴブレットに入れられた棒をジェームズたちに突きつけた。
「君たちの方が一人少ないけど?」
ジェームズがマルシベールの青い目を見下ろした。
「そっちは三人も同然、オレが二人片付けるよ」
マルシベールはジェームズの背後で怯えているピーターを眺めて言った。
7人がそれぞれ棒を引いた。
1階-ピーターVSマルシベール
2階-リーマスVSエイブリー
3階-シリウスVSセブルス
4階-ジェームズVSセブルス
「ちょっと待て!」
セブルスが声を上げた。
「何で僕が二回も当たってるんだ?」
ジェームズが嬉しそうにセブルスを見つめている。
「あれ…?二本入れたのはオレの名前だぜ…?」
マルシベールが呟いた。
「ま、そういうことで」
ジェームズは棒を弄びながら手を振り、寮へ帰って行った。