幸せの黒い犬 犬狼
リーマスは驚きのあまり言葉を失った。
シリウスが消え、代わりに大きな黒い犬がいた。
「シ、リウス?」
リーマスは恐る恐る名前を呼んだ。
犬は頷いた。
「それって…まさか」
リーマスは知っていた。それが魔法省の認可がいる業だと。それは危険が伴う高等な業だと。そして、狼男と一緒にいられる[動物]だということを。
リーマスは黒い犬を見た。
立派な黒い犬を。
太陽の光に当たってキラキラ光っている艶の良い毛。
シリウスと同じ、強い光を宿らせる瞳。
「馬鹿…ホントに馬鹿…」
リーマスは涙が溢れ、両手で顔を覆った。ポロポロと涙がこぼれる。
犬は座り込んだリーマスの周りを飛び跳ね、ぐるぐる回った。
リーマスが泣きながら笑う。
しまいに犬に押し倒され、笑い声を上げた。
リーマスが走る。先回りされて体をかわす。いつしか犬は男の姿に変わり、リーマスを捕らえる。
リーマスの陽に透ける茶色の髪、消えそうな姿をシリウスは追いかけ、抱きとめ、バランスを崩したリーマスと落ち葉の上を転がった。
そして、激しく口付けを交わした。
唇が離れ、シリウスはリーマスに覆いかぶさりながらその目を真直ぐに見て言った。
「リーマス、俺のために笑っていてくれ」
リーマスは微笑んだ。涙が一筋流れる。
シリウスはそっと指で涙を拭うと、ゆっくり口付けた。
秋の日差しの中、全てが輝いた。
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