Rainbow 鹿猫
「セブ…今日、空けといて。僕のために。夕食が終わったら必要の部屋に」
いつになく真剣で真直ぐな眼差しにセブルスの頬が僅かにほころんだ。
ー…お前はいつも自信たっぷりだ…なんの疑いもないその目で…
「ジェー…」
その瞬間、バタバタと足音が聞こえ、セブルスは身を引いた。
グリフィンドールの下級生たちがジェームズを取り巻いた。
小さな可愛らしい女の子たちにジェームズは背を押されてゆく。
「僕は空いているが…お前は…」
セブルスは遠ざかる姿を見送りながら呟いた。
セブルスの予感は的中した。
夕食の食堂へつながる通路を歩きながら前を見ると、クィディッチのメンバーや下級生たちに囲まれ笑っているジェームズの姿があった。
セブルスはなぜか言いようのない寂しさに駆られた。
目を逸らしたくてもつい見てしまう。
すると、シリウスとピーターが人波から外れた。
そしてジェームズもリーマスに耳打ちすると、一瞬の隙を見て姿を消した。
セブルスはその後を追い、暗い廊下に入ると、壁に手をつき、必要の部屋へ入った。
煌びやかなリボンがそこら中に垂れ、小鳥が飛び回っている。
テーブルには準備中と分かる皿やゴブレットが置いてあった。
「スネイプ…」
シリウスとピーターが呆気にとられてセブルスを見た。
「ポッターは?」
「まだ外でもみくちゃにされてるだろうな…」
シリウスが素っ気なく答える。
セブルスは意を決した。
「ポッターにプレゼントをしたい」
シリウスがテーブルの向こうから顔を上げた。
ピーターもセブルスの言葉の続きを待っている。
沈黙がしばらく続いた。
「あの…何を?」
ピーターが小さな声を出した。
セブルスは目を逸らして呟いた。
「…僕を……」
シリウスがテーブル越しに卒倒した。