マスカレード 全員
「おいジェームズ、お前は誰と踊るんだ?」
シリウスがマシュマロを口に放り込みながら聞いた。
「ん?いや、誰にしようかな…?候補はいるけど…」
ジェームズは言葉を濁すと、シリウスが手にしている袋からマシュマロを取り、指先で弄んだ。
「シリウスは?」
「ああ…そうだな…」
シリウスもまた言葉を濁した。
「でもさ、誰と踊ったって、相手は気付かないんだよね?」
リーマスが立ち上がった。マシュマロがなくなったらしい。
「そうなんだ。絶対に気付かない…あんな姿じゃね…」
ジェームズの言葉に一同が壇上で見せられた仮装姿を思い出した。
真っ白な背の高い天使。しかし頭は鳥だった。
ちょうど、ペストが流行った時代に医師たちが付けていた仮面のような頭だった。
壇上でスラグホーンが木の実のような薬を飲んだ瞬間、生徒たちがどよめいた。
気味悪がる者が大半だった。
「これを飲むとみなこの姿に変わる」
ダンブルドアが嬉しそうに言った。
真っ白な鳥の頭をした怪物のような天使がダンブルドアの隣で膝を折り、長い人間の腕が胸元に当てられ、ダンスを申し込む仕草をした。
背中の大きな翼がゆらゆらし、不意に大きく広がった。
あちこちから驚嘆の声が上がった。
頭さえ鳥でなかったら、美しい天使そのものだった。
エジプトの神のような天使はダンブルドアを見下ろした後、生徒たちの前で自分の姿を見せるように回った。
言葉は発することができないようだった。
ダンブルドアが天使の手を取り、生徒たちに向き合った。
「代わる代わるこの姿になり、好きな者と踊ることじゃ」