バランス 犬→猫
シリウスは自分のローブをセブルスに羽織らせると、その手元を見やった。
「何読もうとしてたんだ?」
セブルスが薄闇の中で本をかざした。
「薬草の煎じ方」
シリウスが笑った。
「…そりゃあ、無理だ。明かりはつかない。俺、読みたくないもん」
「面白いぞ」
シリウスは肩をすくめると、片手を伸ばし、セブルスの体が密着するように抱き寄せた。
「暖を取るだけだ!」
シリウスは体を離そうとしたセブルスに言い放った。
セブルスは目を逸らし、されるがままに体を寄せた。触れた部分から体温が溶け合ってゆく。しかし、シリウスの方が温かい気がした。
ふと思い付き、ローブの片側をシリウスに差し出した。
「……?」
「そっち側」
シリウスは示されるまま、大きなローブに二人がすっぽり入るようにした。
「雪が降っている」
外は晴れていたのを思い出し、セブルスは呆然と呟いた。
「ああ、言ったろ?遭難の部屋だって。これが夏になると嵐になるんだぜ」
得意そうに言う。
「自慢にもならないな」
セブルスがため息をついた。
「なんで追われてたんだ?」
「ん…いや、まあ、色々と…」
「程々にしないとルーピンが泣くぞ」
「…分かってる」
シリウスは腕の力を強めた。セブルスが肩口に納まる形になった。
「…ブラック」
セブルスは声を低くして、たしなめた。
「…無差別なんかじゃない…」
「…気にしてたのか?」
「お前に言われたからだ」
セブルスは黙って床を見つめ、伸ばされたシリウスの足を見つめた。
自分より長い。
ジェームズよりも…?
セブルスはシリウスの顔を見た。