バランス 犬→猫
シリウスはローブを脱ぎ、セブルスに放った。
セブルスが青白い顔を上げた。
「着ろよ…お前が風邪をひいたらジェームズに殺されちまう」
セブルスはローブを掴み、立ち上がると、シリウスのそばにしゃがみこんだ。
「…明かりが欲しい。本を読む」
セブルスが言った。
「ピンクか紫になるぜ。この間そうなった」
「…暖炉は?」
「この部屋に暖を取るものは出ない。野暮なこと聞くなよ」
セブルスはムッとした。
「貴様はいつもこんな不埒なことをしているのか?」
シリウスは微笑んだ。
セブルスは内心、その美貌にいいようのないものを感じたが、あえて心から消した。
「昔はな…」
「今、この間と言ったぞ」
顔を近付け、睨む。
シリウスは体を移動させた。
「あんまり近づくなよ…これでも我慢してるんだ」
「……は?何が?」
セブルスは純粋に首を傾げた。
シリウスはうなだれた。
「お前さあ…自覚がないのって一番罪だぞ…」
「デリカシーのない人間に言われたくない。僕は貴様よりよっぽど」
「そうじゃない…」
シリウスは急に顔を上げると、セブルスの頬に手を添えた。
一瞬にして空気が変わった。
セブルスが目を見開き、飛び退いた。
「そういうこと」
シリウスが笑う。どこか自嘲げな色を帯びていた。
セブルスはシリウスを穴が開くほど見つめた。
「無差別なケダモノめ!」
容赦のない言葉にシリウスは目を閉じて上を向き、壁に頭を付けた。
下を向けば涙が零れそうだった。
セブルスはシリウスが反撃して来ない様子を悟り、気まずさを覚えた。
「…言いすぎたか?」
「…ああ」
シリウスが短く言った。
「………すまない」
「…座れよ、変なことしないから…」
セブルスはおとなしくシリウスの隣に座り込んだ。