バランス 犬→猫
「遭難の部屋…?」
セブルスが怪訝そうにシリウスの顔を見た。
部屋は、目を凝らしてやっと顔が判別できるほど暗かった。
「ああ…レイブンクローの生徒だけが使える部屋だ。“あらゆる”遭難者が答えを模索する部屋だ」
シリウスはポケットに手を突っ込み、ぶっきらぼうに説明した。
「どうやったら出られるんだ?」
セブルスの冷ややかな視線をかわしながら、シリウスは頭を掻いた。
「…時間が来るまで待つしかない…この場合…」
「時間?…どのくらいだ?」
「分からない…たぶん七時間か八時間…」
「なんだと!」
セブルスが怒りもあらわに詰め寄った。
シリウスが身を引く。
「…安心しろ、ここでの時間は外ではほんの数分だ」
シリウスは顎で巨大な砂時計を示した。
「あれが全部落ちれば扉が出てくる」
セブルスは砂時計に近付き、忌々しそうに落ちる砂を眺めた。
そして思いついたように顔を上げた。
「ブラック…貴様、遭難の部屋だと言ったな。レイブンクローの物質なら、どうせ謎なぞの類だろう。何か答えを提示すれば開くんじゃないのか?」
セブルスは振り返りシリウスを睨み付けた。
シリウスはポケットに手を突っ込んだまま、黙っていたが、観念したように派手なため息をついた。
「この部屋は逢引き部屋だ!」
セブルスの表情が睨み付けたままの状態で固まった。
シリウスは目を逸らし、片手を地面に付けた。
石畳が木の床に変わった。
「原理は必要の部屋と一緒だ。ただ…わざと不親切になっている。できるのはこのくらい。あとは合意がないと何も出てこない」
「くそッ!!」
セブルスは部屋の隅に座り込んだ。
シリウスも離れた場所に座った。
砂時計が半分ほど落ちた。
あれから何時間も二人は黙ったまま座っていた。
シリウスはセブルスの様子をうかがった。
セブルスは膝を折り、体を抱え込むようにしている。寒さで震えているのが気配で分かった。