Melty Xmas 鹿猫
セブルスは一人、考え事をしながら廊下を歩いていた。
恋人に贈るものが決まらない。
毎年頭を悩ませていた。
考えれば考えるほど分からなくなる。
昔から、人とクリスマスパーティをしたこともなく、プレゼントを贈り合うこともなかった。
溜息をついて階段を見上げた時、エイブリーが下りてきた。
マルシベールを肩に担いでいる。それはまさに担ぐといった様子で、まるで土嚢か何かを運んでいるようだった。
「何をしたんだ?」
セブルスがマルシベールの腰の辺りを見上げながら聞いた。
「ああ、いつものことだ」
エイブリーが事もなげに言う。
「いつもはやられないんだ!!」
マルシベールの声がエイブリーの背後から聞こえた。どうやら、またグリフィンドール生と喧嘩したらしい。
「そんなことより、頭に血が上る!エイブリーもっと何とかならないのかよ!」
「医務室に行ってくる」
エイブリーがマルシベールの抗議を無視しながら歩き出した。
「僕も行く」
セブルスは短く言うと、エイブリーと並んで歩いた。
独りで考えているより、幾分気も紛れ、もしかしたらリーマスがいるかもしれないという小さな期待もあった。
その期待通り、医務室にリーマスはいた。
「セブルス!」
リーマスが嬉しそうに手を振った。
「どうしたの?」
「いや、こいつらの付き添いだ」
素っ気なく答える。まさかリーマスがいるかもしれないと思ったなどとは、決して言えなかった。
セブルスはポンフリーに叱られているマルシベールたちに背を向ける形で、リーマスと向かい合わせに座った。
「…体調が悪いのか?」
セブルスが目を逸らしながら呟いた。
リーマスは目を細めた。目を逸らすのは、照れている時の癖だと知っていた。
「ううん、全然問題ないよ。今日は先生から新しい薬をもらいに来ただけなんだ」
「…脱狼薬か?」
小声で言う。
「そう、まだ試作品だけど…」
「…そうか…」
セブルスは黙った。いつか自分が完璧な脱狼薬を作ってやりたいと、リーマスを見るたびに思う。