Melty Xmas 鹿猫
コツコツと窓を叩く音が聞こえる。
セブルスはジェームズかと思い、急いで窓を開けた。
「エイブリー…」
「クリスマスプレゼントだ」
エイブリーは無表情でツリーの方をあごで示した。
「待ってるぞ…あれはおそらく何時間も立っていたに違いない。もう少しすれば、ツリーの下に不様な雪像を見ることができるんだが…行ってやれ」
それだけ言うと、エイブリーはマルシベールの元に降りていった。
「何時間も…?待って…」
セブルスはローブを羽織り、窓の下を見た。
エイブリーたちの姿が見えなくなるのを待ち、外へ出た。
暗闇の中、ツリーだけがぼんやり光り、そこだけ雪が輝いて見える。
キシキシと雪を踏み、ツリーに近付く。
セブルスは細く長い息を吐いた。
なぜか妙に緊張する。思えば、自分から会いに行くことなど数えるほどしかなかった。いつもジェームズが会いに来た。いつも自分を待ち構え、抱き留めてくれた。
セブルスは顔を上げた。
そのまま真っすぐ歩く。
太い幹に背を預け、ぼんやりと立っているジェームズが見えた。
雪で頭を白くし、その顔は心細そうだった。
初めて見る切なそうな表情に、セブルスは胸が詰まり、無意識に早足になった。
「ジェームズ…」
ツリーの明かりに浮かび上がった白い顔を見るなり、ジェームズはセブルスを掻き抱いた。
力いっぱい抱き締める。
セブルスはジェームズの冷えきった体に腕を回し、雪を払うように背中をたどたどしくさすった。
無言のままジェームズが肩口に額を付けた。
跳ねた髪の先までもが冷たく凍えている。セブルスもまた無言で手を上げると、そっと髪を撫で、雪を落とし、頭を撫でた。
二人はしばらく何も言わず、抱き合っていた。
時折、雪がばさりと落ちる。