Melty Xmas 鹿猫
雪が降る。
校庭のツリーはハグリットが森の動物達を思って飾り付けたものだった。
城の入り口を通らないほど立派なもみの木に、様々な飾りが付いている。中にはフクロウや狐が好みそうな、ウサギやイタチがぶらさがっていた。
ジェームズは一人、ツリーの下にいた。
幹に寄り掛かり、城から最後の馬車に乗る生徒たちを眺めている。
すでに辺りは暗く、吐き出す白い息は頼りなげに舞い上がった。
「どうしても…今日…ここにしようって決めたんだけどな…」
ジェームズは点々と明かりの灯った城を眺め、自分が立っているツリーを見上げる。
枝の間から、虹色の光が見えた。
セブルスは窓辺に座り、憂欝そうに暗くなった外を眺めていた。
校庭のツリーは森の近くにあり、セブルスの寮からも見える。
ー…あの下にジェームズがいるのだろうか…?
セブルスは気になったが、気持ちだけが焦り、それに比例するように気分が沈む。
遥か下にエイブリーとマルシベールが歩いている。
二人が最後の生徒のようだった。
マルシベールは相変わらず雪玉を作っては、前にいる生徒に投げていた。
「マルシベール…」
エイブリーがたしなめる。
ふと、エイブリーの目に、巨大なツリーの根元に立ち尽くす人影が写った。
エイブリーはマルシベールを置いて、ツリーの根元近くまで歩いた。
ジェームズは寒さに震え、蒼白な顔をしている。
何時間も立っていたことが一目見て分かった。
距離を取ったまま、エイブリーはその姿を見ると、何も言わずにきびすを返し、ゆっくりと歩いていった。
「マルシベール、箒を借りるぞ」
エイブリーはマルシベールが持っていた箒を取り上げた。柄が折れている。帰ったら直すつもりだったらしい。呪文を唱え、元に戻した。マルシベールがぽかんと口を開ける。
「直せるのかよ!直せないって言ったのに!嘘つき!」
「虚偽だらけのお前に言われたくないな」
マルシベールが喚くのを無視し、エイブリーは箒にまたがると自分の寮まで飛んだ。