Melty Xmas 鹿猫
ジェームズは足を緩めた。
端から逃げ切るつもりなどなかった。頃合いを見てセブルスと甘いひとときを過ごす頭でいた。
柱の影に隠れ、セブルスを待つ。すぐに駆けてくる足音が聞こえ、赤いサンタ服に身を包んだ恋人の痩躯を抱き留めた。
セブルスは驚きのあまり声を上げたが、楽しそうに笑うジェームズを思い切り振りほどいた。
その顔は怒りに上気し、走ったせいで肩で息をしていた。
「ごめんセブ…バレちゃった?」
ジェームズが両手を広げてセブルスに近付いた。
バチッという電気が流れるような音が響いた。
ジェームズが頬を押さえ、二、三歩よろめいた。
セブルスは杖を握り締めていた。
「セブ…?」
「僕を騙したな…ジェームズ…何のつもりだ?僕に恥ずかしい格好をさせて、皆の笑い者にするためか?」
「…違う!僕はただ…」
ジェームズの顔から笑みが消えた。
セブルスは本気で怒っていた。目に涙を溜めている。帽子をジェームズに叩きつけると、背を向け歩いてゆく。
「セブルス!!」
「来るな!貴様の顔など見たくもない!」
「セブ!」
ジェームズは慌てて追いかけたが、スリザリン寮の入り口で扉を閉められた。
「どうしよう…またやっちゃった…」
ジェームズが帽子を握り締めた。
スリザリンの談話室を大股で歩き、セブルスは部屋へ戻った。
すぐに着替えようと思った時、制服を必要の部屋に置いてきた事に気が付いた。
「くそッ!!」
怒りに任せてベッドの柱を拳で殴った。
「セブルス…」
ベッドのカーテンを開けて、エイブリーが顔を覗かせた。
制服のまま、ネクタイだけを外している。ベッドにはマルシベールがいるようだった。エイブリーはマルシベールを抱く時も服は脱がない。それが流儀のようだった。
セブルスはエイブリーを見上げた。
「ちょうどいい、エイブリー、ローブを貸してくれ」
エイブリーが顔を引っ込め、すぐにローブが投げ落とされた。
「一時間で返してくれ」
「二時間だ!」
マルシベールの声が奥から聞こえた。
セブルスはすばやくエイブリーのローブを纏うと、部屋を飛び出した。