白い恋人たち 鹿猫
グリフィンドールの食卓はざわついていた。
ジェームズがご機嫌で緑と白のマフラーをして登場したのだ。
「食事中にマフラーってエチケット違反かな?」
ジェームズはしれっとして笑う。
シリウスは見たくもないとばかりにチキンにかぶりついている。
「ジェームズ、どこ行ってたの?」
リーマスが楽しそうに聞いた。
「聞くなリーマス、飯がまずくなる」
シリウスがミートパイに手を伸ばしながら言った。
ジェームズはようやく聞いてくれたかと言わんばかりの笑顔で、「ん、北庭の一番奥の温室」と答えた。
シリウスはぎょっとしてミートパイに伸ばした手を引っ込めた。
「お前あそこに入ったのか!?」
テーブルに手を着き、身を乗り出した。
「うん、セブルスはいつもあそこにいるよ?」
ジェームズはこともなげに言った。
「お前、大丈夫だったか!?」
シリウスが観察するようにまじまじとジェームズの顔を覗き込む。
「いやあ、大丈夫なワケないでしょう。セブルスとのデート♪セブルスが壮絶に色っぽくてさ~もうノックアウト寸前、押し倒しちゃう寸前だったよ~。しかもねセブは…」
長くなりそうな惚気にシリウスは呪文を唱えるように言い放った。
「ピーター!!」
突然呼ばれたピーターはすばやく手元にあったヌガーを掴んだ。
「ごめん!ジェームズ!!」
そう言うなりジェームズの口にヌガーを突っ込む。
「………」
ジェームズがピーターを睨んだ。
リーマスは相変わらずクスクス笑っている。
シリウスがようやく落ち着いた声で話した。
「俺が大丈夫かと言ったのは、変な虫に襲撃されなかったかってことだ。その頭についても聞きたいとこだがな…」
ジェームズは首を傾げた。
「ひや、なひもほなかったよ」
ヌガーを口から外して怪訝そうにリーマスを見た。リーマスは実に楽しそうだ。
リーマスが説明する。
「ジェームズ、あの温室にはね、いたずら除けのハチがいっぱいいるんだ。虫払いの呪文をかけて中に入らないと刺されるよ。ちなみにシリウスはもうやられている」
リーマスはにこにこしてシリウスを見たが、シリウスはつまらなそうにそっぽを向いた。