このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

夢路の果て 赤蛇(アールシ)


番外編



アーサーは冷たい石に顔をつけていた。
自分の体から流れ出る大量の血が、顔や手を濡らしているのが分かる。
大蛇に砕かれた肋骨も、口から溢れる血もまるで違う誰かのもののような錯覚に陥った。

自分は死ぬのか…。

アーサーはぼんやり考えた。

霞んでゆく視界に、光が見える。

プラチナブロンドの白い顔。天使か女神のお迎えかもしれない。
アーサーは死ぬのも悪くないと思った。
そっと抱きかかえられ、白い手がせわしなく動き、出血を止めていく。その先に杖が見えた。

なんだ杖か…。
まだこの世界にいるのか…。

目を開けると、ルシウスの顔があった。

「ルシウス…」

アーサーは微笑んだ。

「こうやって死ぬのも悪くないな…ルシウス…」

「お前を殺すのは私だ…」

ルシウスが囁いた。

「久々に君が泣いてるのを見たよ…。君は相変わらず美しい…」

アーサーは震える手でルシウスの頬に触れた。
白い頬に真っ赤な血が付いた。


「ルシウス…愛しているよ…」


アーサーはルシウスの腕の中で、微笑みながら目を閉じた。

ルシウスは意識を失ったアーサーに唇を重ねた。

アーサーの青ざめた瞼に、温かい涙が落ちた。
4/4ページ