夢路の果て 赤蛇(アールシ)
番外編
アーサーは冷たい石に顔をつけていた。
自分の体から流れ出る大量の血が、顔や手を濡らしているのが分かる。
大蛇に砕かれた肋骨も、口から溢れる血もまるで違う誰かのもののような錯覚に陥った。
自分は死ぬのか…。
アーサーはぼんやり考えた。
霞んでゆく視界に、光が見える。
プラチナブロンドの白い顔。天使か女神のお迎えかもしれない。
アーサーは死ぬのも悪くないと思った。
そっと抱きかかえられ、白い手がせわしなく動き、出血を止めていく。その先に杖が見えた。
なんだ杖か…。
まだこの世界にいるのか…。
目を開けると、ルシウスの顔があった。
「ルシウス…」
アーサーは微笑んだ。
「こうやって死ぬのも悪くないな…ルシウス…」
「お前を殺すのは私だ…」
ルシウスが囁いた。
「久々に君が泣いてるのを見たよ…。君は相変わらず美しい…」
アーサーは震える手でルシウスの頬に触れた。
白い頬に真っ赤な血が付いた。
「ルシウス…愛しているよ…」
アーサーはルシウスの腕の中で、微笑みながら目を閉じた。
ルシウスは意識を失ったアーサーに唇を重ねた。
アーサーの青ざめた瞼に、温かい涙が落ちた。
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