夢路の果て 赤蛇(アールシ)
喉が圧迫される。
胃が反応し、喉を焼きながら、さかのぼる。
「…がッ…はッ…」
アーサーの開いた唇から、数時間前に幾度も飲み干したルシウスの白濁した精液が溢れ、零れた。
苦しげに眉根を寄せながらも、アーサーは腕も足も動かさなかった。
ルシウスは急に自分が滑稽に思えた。まるで、芝居をしているような、遠い夢を冷たい目で見ているような馬鹿馬鹿しさを感じた。
手を、緩めた。
アーサーが身を捩って激しく咳き込んだ。
シーツで口元を押さえながら、自分を見下ろしているルシウスの目を見た。
なぜ…?なぜ手を離した?
アーサーの目が、そう訴えていた。
「私を殺してくれ…」
ルシウスが呟いた。
「…できない…」
アーサーが目を閉じた。
「さんざん私を犯しておいて…?」
揺れる瞳がアーサーを見つめ、自嘲げに笑った。
アーサーは何も言わなかった。
ルシウスは自分を蹂躙し、凌辱し、そして愛した男を見下ろした。
「…何も抱えず、何も持たず、何にも囚われず、そうして生きていくお前が羨ましい…私はお前を憎むよ…私を殺さなかったお前を…お前を殺せない自分を…」
その声は妙に澄み、静かに流れた。