夢路の果て 赤蛇(アールシ)
ルシウスは生暖かい空気の中で、目を開けた。
規則正しい寝息が聞こえる。
燃えるような赤い髪、自分より強い腕、大きな手の平が自分の首に押し当てられている。
アーサーはいつもそうだった。
眠る時、必ず自分の首筋の脈打っている部分に手を当てて、目を閉じる。
よく眠っている…。
ルシウスは薄い灰色の瞳で、アーサーの寝顔を見つめた。
そして赤毛を見つめ、監督生の部屋の天井を見つめた。また視線を戻し、アーサーの閉じられた瞳を見つめた。
この瞳が開いたら、終わる。
二人は生きながら、道を分かつ。
涙が自然にこめかみに流れ、耳の付け根をくすぐった。
ルシウスは細く長い指で、アーサーの首筋に両手を伸ばした。
温かい肌、その中に流れる熱い鼓動が手の中に納まった。
取り憑かれたように、指先に力を入れた。
「…ん…」
アーサーの眉間に一瞬、皺が寄る。
ルシウスはそのまま徐々に力を込めた。
「ルシウス…」
少し擦れた声でアーサーは呟き、目を開けると、薄い色の瞳を見た。
アーサーはルシウスの痩せた体を両腕で持ち上げ、自分に馬乗りになるようにさせた。
ルシウスは無表情のまま、両手をアーサーの首にかけている。
「そのまま、体重をかけて…」
アーサーは囁いた。
ルシウスは言われた通り体重をかけ、アーサーの首に指先を食い込ませていった。
アーサーは微笑み、愛しそうにルシウスを見上げ、目を閉じた。
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