トリックスター 鹿猫
スリザリンの談話室を枕を抱え、セブルスが通り過ぎる。スリザリン生たちは初めて見るセブルスの嬉しそうな顔に目を見張った。あちこちから見惚れた末のため息が漏れる。
「セブルス・スネイプ!」
談話室の扉を出た所にルシウスが待ち構えていた。
「どこへ行く?」
ルシウスは冷たい眼差しでセブルスを見下ろした。
セブルスは困ったようにうつむき、顔を上げてルシウスの目を覗き込んだ。
ルシウスが一瞬身を引いた。
「グリフィンドールへ…」
セブルスが枕に顔をつけ、上目遣いで答える。
「あの…駄目ですか…?」
頬を染め、哀願するように首を傾げた。
ルシウスが思わず口元を押さえた。セブルスの意外な愛らしさに顔がにやけてしまうのを必死にこらえ、威厳を保とうと咳払いする。
「夜の外出は禁止になっている」
ルシウスが目を逸らしながら言った。
「ルシウス先輩!外出許可を下さい。お願いします!」
セブルスが顔を近付けた。
「いけませんか…?」
必死になり、目が潤んでいる。
「あああ…分かった…分かったから離れろ!」
ルシウスがセブルスの肩を掴み、体を離した。
セブルスが嬉しそうに微笑んだ。
「ルシウス~」
廊下から声が聞こえた。ルシウスは声のする方を見るなり表情が凍り付いた。
アーサー・ウィーズリーがゆったりと歩いてくる。
「いいのかなあ~一生徒を特別扱いして」
アーサーは楽しそうにルシウスの細い体を背後から捕らえた。
「離せ!この野蛮人!」
「野蛮人で結構!我がグリフィンドールのシンボルは野獣だよ」
アーサーは飄々と答え、セブルスを見た。
「こんばんは!セブルス」
アーサーがにっこりと笑う。
「こんばんは」
セブルスは深々とお辞儀した。
「ジェームズから聞いたんだ。ここに来れば面白いものが見られるってね。ついでに私の監督生の部屋も乗っ取られた。そういうわけでルシウス、今夜は泊めてくれ」
「断る!」
ルシウスが金髪を振り乱しながらもがいた。