トリックスター 鹿猫


「エイブリー、悪いんだが僕は今夜、ジェームズの処へ行く。寮へ帰るのは明日になると思うからよろしく」

「ご自由に」

セブルスはエイブリーの肩に手を置き、マルシベールにも挨拶をするとグリフィンドールのテーブルへ歩いて行った。

「エイブリー!どうすんだよ!いいのあれ!?我がスリザリンがあ~」

マルシベールは遠くでジェームズを背後から抱き締め、騒然となったグリフィンドールテーブルを見つめた。

「マルシベール、喚いていないでさっさと食事を済ませたらどうだ?」

エイブリーが紅茶を飲みながら大きな青い目を見下ろす。

「……」

マルシベールは顔を上げ、エイブリーを思い切り睨み付けた。

エイブリーが口元に笑みを浮かべた。



「セブルスあ~ん」

ジェームズが嬉しそうにバニラムースをスプーンに盛り、セブルスに食べさせている。
セブルスは恥じらいながらも微笑んで口を開ける。

「ジェームズ、お前も」


セブルスが皿を手に持ち、ストロベリープティングをスプーンですくい、ジェームズに食べさせる。

その様子をグリフィンドール生が茫然と見つめていた。

フランク・ロングボトムは口元からスープをボタボタと零し、リリーは切り終えた肉に気付かず、二人を見つめたままナイフをガリガリと動かし皿を割った。

「スネイプに何があったの…?」

ピーターが小声で恐る恐るリーマスに尋ねた。

「うん、ひとときの夢が今ここに!セブルス!僕もあ~ん♪」

リーマスはテーブルに身を乗り出し、小鳥のように口を開けた。

セブルスがくすりと笑い、チョコレートムースをリーマスに食べさせた。

「美味いか?リーマス?」

「うん!」

「ほら、ペティグリューも」

「え…あの、その…僕は…」

顔を真っ赤にしてうろたえているピーターの隣で、シリウスはブツブツ呟きながら無心に肉を切り刻んでいる。チキンはすでにそぼろになっていた。
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