トリックスター 鹿猫
「で、君がこうなっているワケだね?」
リーマスが呆れ顔でジェームズを見下ろした。
ジェームズは力が抜けたように背もたれに体を預け、惚けている。
「うん…もうヤバかった」
宙を見つめながら、セブルスとの行為を思い出している。
「セブルスはどこ?」
「シャワー浴びてる…もう出てくるはずだよ」
必要の部屋は文字通り必要な数だけ空間ができあがっていた。
ジェームズとリーマスは、談話室を小さくしたような部屋にいた。
「リーマスじゃないか!」
セブルスの声にリーマスが振り向いた。
まだ湿った髪から雫がぽたぽた落ちている。シャツとズボンだけという制服姿だったが、シャツのボタンは全開だった。
白い肌にジェームズが残した花びらのような鬱血痕がいくつも付いている。
セブルスはリーマスの視線に気付き、恥ずかしそうに慌ててボタンを閉めた。
「確かにヤバいかも…」
リーマスが呟いた。
ジェームズにぴったりと寄り添うように、セブルスは座っていた。
指を絡ませ、肩口に頭を預けて時折ジェームズに耳打ちする。ジェームズの頬は弛みっぱなしだった。
その様子をリーマスが死んだ目で見つめていた。
「僕…当分チョコレートを食べなくていいかも。なんか毛穴から糖分が入って来てるみたいだよ…」
「まあまあ、リーマス…シリウスはどうした?」
「また居残りだよ」
リーマスは肩をすくめた。
シリウスは成績は良いが、魔法薬学だけは嫌いなため成績が良くならない。しょっちゅう居残りをさせられていた。
「リーマス」
セブルスがリーマスを見た。
「な、何…?セブルス(っていうか君は開心状態だと僕をファースト・ネームで呼ぶんだね)」
リーマスは可笑しさと奇妙さと怖さで、一瞬身を引いた。
セブルスが立ち上がり、ジェームズに軽いキスをしたあと、リーマスの元へ歩み寄り、顔を覗き込んだ。