トリックスター 鹿猫
「セブルス何作ってんの?」
ジェームズがセブルスの背中越しに手元を覗き込んだ。
「ああ、閉心薬だ」
「閉心薬?閉心術じゃなくて?」
「そうだ、閉心術は訓練と個人差がある。だったら、飲めば誰もが使えるものにしたら良いんじゃないかと思ってな。真実薬があるくらいだ、その逆がないのはおかしい」
「ふ~ん、で、実験なんだ」
「安心しろこれは僕が飲む。幸い失敗しても人体に影響のないものばかりだ」
「君って意外と実践派なんだね、もっと理論派かと思ったけど」
「それは誉めているのか?けなしているのか?」
セブルスはムッとしながら言った。
「愛してる」
ジェームズがにっこり笑った。
セブルスが大きなため息をつく。
「セブは?」
「何がだ?」
「愛してるって言って!」
「……」
セブルスはまた大きなため息をついた。
「お前は万年開心状態だな、成功したら、飲ませてやる!」
「どこ行くの?」
「授業だ!」
「僕は次は入ってないや~一緒に行こうかな?」
「来るな!」
「は~い」
必要の部屋から出ていくセブルスを見送った後、ジェームズは待ってましたとばかりに机に近付いた。
「ふ~ん…」
細かく書き記された羊皮紙を見つめ、薬品を調べる。
「なるほど…するとこの順番を替えればいいわけだ…」
ジェームズは瓶を手に取り、調合中の小さな鍋に数滴垂らした。色も匂いも変わらないことにほっとし、ほくそ笑む。
セブルスが秀才ならジェームズは天才である。
“開心薬”ができあがった。
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